取材メモ3月分

3月17日、18日に全日本に参戦する主要なホンダ系チームのテストが、ツインリンクもてぎで行われた。
テストということもあり、各チームとも比較的のんびりムード。ホンダ関係者とも割とゆっくり話が出来た。
というわけで、あるホンダ関係者に聞いた話をメモしておこうと思う。
まず今年から始まるMotoGPのMoto2クラスの話。ホンダ関係者の話では、DORNAにエンジンサプライメーカーとして手を挙げたのは3社で、ホンダのほかにヤマハ、トライアンフだったそうだ。その結果、ホンダに決まったわけだがDORNAとしても当初はハイチューンエンジンでのレースを考えていたようで、ホンダとしてもレース用の専用600ccパワーユニットを作るつもりでいたそうだ。ところが世界的不況に陥り、ランニングコスト低減を打ち出し、一つのエンジンで3レースもたせたいといってきたことから、ホンダとしても大きく方向転換。結果として、CBR600RRのワールドスーパースポーツ用よりデチューンしたパワーユニットを供給することになったそうだ。
ちなみにワールドスーパーバイク選手権併催で開催されているWSSのエンジンは、それぞれのチームが独自にチューンしており、シリンダーヘッドを面研し、さらにピストンはスタンダードと制限されているが、公差内のハイトが高めとなっているピストンを厳選して組み込むことから、圧縮比は14近くまで上がっているそうだ。これにハイカムを組み込み、トップエンドは16500回転くらいまで回して使うというのが、最新WSSエンジンの中身のようだ。しかしこうした使い方をすると、エンジンの耐久性は1000km程度。ピークで5馬力はアップするという。ちなみに全日本ST600の場合、エンジンを構成するパーツはストック状態なので、ボトムが8000回転あたりから使えるので、ワイドレンジで使いやすい特性となっている。
このST600用エンジンに、スタンダード改造かあるいはオリジナルフレームに、ST600用サスペンションにスリックタイヤ、という構成が今年から始まるJ-GP2というわけだ。
タイヤがMoto2クラスの場合はダンロップ製のワンメイク。対してJ-GP2はオープン。エンジンの扱いやすさ、そしてタイヤメーカーが制限なしという点から、ホンダ関係者はMoto2クラスよりもJ-GP2クラスのほうがラップタイムで速くなる可能性があると指摘していた。最新SS600マシンの車体ポテンシャルは高く、スリックタイヤをスタンダードフレームとスタンダード改の車体に組み合わせても、スリックタイヤのいいところ(コーナリングスピードの向上)が出せるという。
現状のJSB1000クラスほどコストがかからず、しかもラップタイムとのコストとタイムといいうパフォーマンスで考えると、それは非常に高くなるはずだ。J-GP2上位が日本GP開催時にはスポット参戦できるなどされれば、さらに盛り上がるかもしれない。
さらにこの話を聞いていて、このクラス設立の目的の一つとして、ST600クラスのステップアップ先というものもあることを思い出した。現状のST600クラスは、それが競争だから仕方ないが、一般公道用タイヤ装着が前提とされているが、実態はサーキット専用の、言ってみればレース専用溝付きタイヤでのレースとなっている。しかしST600クラスはエントリークラスであり、理想的に言えば、一般公道用タイヤでレースをするのが前提であるのだから本来の姿から言って、ドライもウエットも同じタイヤで行われるべきもの。一般公道用タイヤなのにそれはドライ専用で、ウエット時はレインタイヤというのは、先鋭化しすぎている印象が強い。J-GP2クラスが出来、よりレベルの高いレースをする環境が出来たのであるから、これを機会にST600クラスを本来の姿に戻してもいいのではないだろうか。つまり、ドライもウエットも同じ銘柄で戦うよう、レギュレーションで制限するのだ。
という話をあるタイヤメーカーの技術者にしたところ、どうせそうするならOEタイヤに限定したら面白いのではないかという意見をくれた。OEとはもちろん、新車に装着されているタイヤのことだ。新車に装着されているタイヤと聞くと、性能的に今ひとつの印象を持つ人がいるかもしれないが、それは少し現状の車両開発状況に関して認識不足といえる。ちょっと考えてみれば理解できることだが、最新のスーパースポーツモデルの性能はかつてのレーシングマシン以上の軽さとハイパワーで、それを一般公道で走らせようというのだ。タイヤに求められる性能は非常に高く、しかもそれをあらゆる走行条件で発揮しなければならない。さらに言うと、新車開発はおおよそ2年先がけで行われている。つまりタイヤに関しても実は、リプレース用として販売される最新モデルの技術より、何しろ2年先に発売されるバイクに装着されるタイヤだから、そこで使われるテクノロジーも2年先を行っていなければならないのだ。
でもサーキットでは、という心配する人がいるかもしれない。そんな人には、こんなエピソードを紹介しよう。数年前の鈴鹿300km耐久にカワサキの社内チームが参戦した際、スリックタイヤが使用できるにも関わらず、耐久性やアベレージスピードの安定性などから、JSB1000のマシンに溝付きのOEタイヤを装着。見事完走しているのだ。
それほど、最新OEタイヤは進化している。
もちろん、一発のスーパーラップや耐久性、絶対的なグリップ力で比較したら、レース用として販売されている現状のST600用タイヤのほうがその部分での性能は高い。しかしオールラウンドという点で言えば、OEタイヤも侮れないものをもつのだ。
さらにタイヤメーカー側の人間の立場で考えると、それだけ厳しい要求項目を満足するためにさまざまなテストを重ね、OEタイヤとして車両メーカーに提供しなければならない。ST600で使えるとなると、そこで市場が一つ広がり、その分の開発コストをOEタイヤに投入できるというメリットも生まれるのだ。
よりOEタイヤの性能が上がれば、一般ユーザーも喜ぶわけで、非常にバランスのよいことになるはずだが、いかがだろう。

そんなビジョンを抱いてしまう、新設のJ-GP2クラスだ。

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