全日本第2戦鈴鹿2&4 浪花の天才ライダーが復帰

08年を最後に全日本の戦いの場から退いていた辻村猛が、全日本第2戦鈴鹿2&4に参戦してきた。チームは小原レーシングを母体としたテルル&イー・モバイル★KoharaRT。ツインリンクもてぎで3月中旬に行われたテストにも参加したが、本格的な走行は鈴鹿2&4でのウイークから。久々の走行ながら、金曜日のARTテストでは2分11秒211をマークし、オーバーオールの13番手に付けた。

彼の復帰には、携帯電話ショップに対して業務サポートなどを行うGAZELLEの代表取締役社長である服部義一氏の応援が大きなものとなった。というのも実は服部氏は以前ロードレースに参戦しており、辻村のノービス時代の仲間だったのだ。その後、辻村はプロのライダーの道を、そして服部氏はビジネスの道をそれぞれ歩み、久しく連絡も取っていなかったそうだ。そこへ、服部氏の仕事仲間である携帯電話ショップを全国展開するテルル(株式会社ピーアップ)の代表取締役社長である中込正典氏が全日本を戦うチームのスポンサードを始めたことから、服部氏も自身がだいぶ前に身を置いたレース界を見るようになり、かつての仲間だった辻村がさまざまな事情からレース活動を休止していることを知り、彼くらいの人間はまだまだ走るべきと、テルルと一緒にバックアップすることとなったのだ。

03年からJSB1000クラスとST600クラスのダブルエントリーを開始。04年にST600全日本チャンピオン、06年には伊藤真一と組んで鈴鹿8耐で優勝もしている辻村。ST600を走る当時、彼に参戦の理由を聞いたところ、
「自分が培った知識、ノウハウを次世代に伝えるためには若いライダーと一緒に走ることがいちばん。自分がどうというよりは、若いライダーに成長してもらいたいためにST600を走っている」と語っていた。
今回の復帰も、もちろん本人が『走る』ということ、そして『レース』が好きなのはもちろんだが、若いライダーに、プロフェッショナルライダーとして生きていく道を自分が作り、そのあとに続いてもらいたいという気持ちからと言う。
ハード面で彼の復帰を支える小原レーシング代表の小原斉氏は
「グランプリでの優勝、さらにファクトリーライダーとしての経験もあるライダーだけに、4年ぶりの走行でもブランクを感じさせない走りを見せている。さすがの一言。でも、まだライダーと自分のコミュニケーションがうまく取れず、マシンの問題点を指摘するのだが、彼自身もそれがどこに起因するのか判断しかねており、こちらも彼の言葉がまだしっかり理解できていない」
と言う。
とは言え、辻村が伊藤とペアを組んで鈴鹿8耐を制したそのチームには、メカニックとして小原氏も加わっていた。辻村のマシンセットアップ作業に関しては、既に何年も経験しているはず。しかしそれに対する小原氏の答えは、なるほどと納得するものだった。
「鈴鹿8耐での参戦時は、伊藤がマシンのセットアップを担当し、そこで仕上がってきたマシンに辻村は乗って、自分の走りとアジャストしていかに高いペースで走ることができるようにするか、というものだった。コメントを求めても『伊藤さんが走りやすいバイクにしてくれれば自分は合わせるから』というもので、彼が自分の好みをリクエストしてくることがなかった。天才肌のライダーだから何よりも彼が気持ちよく走れる環境を作ることが大事なので、とにかく今はまず、彼がどうしたら気持ちよく走れるようになるのか、それを探っている状態」(小原氏)
当の本人は
「バイクが仕上がればまだまだいける」
と意欲的。
また絵になるライダーが一人、全日本に増えた。

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